憧憬(2021.12修正版)

 

仕事が終わり

夕食前一人夜の散歩道

スーパーで半額のお弁当を買って

綺麗だなーと

光に向かって約1時間

ここは埼玉県が誇る最強繁華街

大宮だ

 

キラキラと光る高層ビルは

僕にとって眩しい嫉妬と羨望の塔

今あの展望レストランで食事をしている人には

きっとこの価値はわからない

その位置の素晴らしさは下にいる者こその価値だ

 

エクセルで一瞬で作ったようなビルが並ぶ

その各部屋に灯り

エントランスにゴールドの【GRAND】

グラウンドからの野球少年のホームランボールもきっと届かない

直前で

こちらのものとは密度の違う空気の中でゆっくりとスピードを落とし 

手前で落ちていく

 

夕食後のスイーツをぶら下げたお子さん連れの若奥様が

その【GRAND】に入っていく

年収おそらく800いや1000万は超えているだろう方々のお暮らしの一幕の想像を巡らせて頂く

 

成城石井だ

 

カーテンの向こう

暖かな家庭

子供達は笑って駆け回り

幸せそうなご夫婦が

高級ワインで成城石井のお惣菜をつまんでいる

IHのシステムキッチンに大きな4段の冷蔵庫

この建物の中にもまた

壮麗な冷蔵庫のビル群が存在している

 

建物や工事のクレーンの端々にチカチカと

ヘリコプターなどがぶつからないように赤色灯

その数が1つ

また1つと

減った

 

高い建物と建物の間に黒い影

ゴジラだ

ビルの間にゴジラが顔を出す光景

これは都会の代表的な風景だ

ゴジラは当たり前のように街を闊歩し

ビルを

店を

道を破壊し口から放射熱線を吐く

逃げ惑う人々

さっきまでロールケーキを買ってルンルンだった親子も裸足でスタコラサッサだ

 

ゴジラは地震にだって強い都心部の唯一とも言える弱点だ

ゴジラは田舎は襲わない

俺がゴジラでもそうする

ゴジラは俺のパワーポイントで作ったみたいなお弁当は襲わない

450円

おつとめ品のシールを付けて225円のお弁当なんか目もくれない

成城石井のオーガニックで健康的な 

一捻り効かせたアイデア食料品の沢山詰まった冷蔵庫のビル群を襲う

ちなみに我が家の冷蔵庫は氷河期みたいな霜が奥に固く溜まっている上に

自動で水が生成され漏れ出づるという仕様になっている

 

今はまだまだこんなですが

僕の将来の夢はゴジラに襲ってもらう事です

エクセルで作ったみたいなエクセレントなマンションに住んで

家も冷蔵庫も襲ってもらう事です

 

いや夢ではありません

これは目標です

今はまだまだこんなですが

もっと努力して

必ず達成してみせます

だから

そしたら

結婚しよう

 

少し疲れたから電車で帰る

車窓の奥で星を霞ませる鮮やかなビル群と

まっすぐ伸びた薄紫の放射熱線が夜空を彩っている

そうしてまた僕はゴジラのいない町に帰る

 

いいなぁ

ゴジラ