朝か
目覚ましをかけ忘れていたけど
大体決まった時間に一度は眼を覚ます
まだ少しだけ暗い
紺色の空
最近帰りも遅く浴室と寝室の行き来しかしていない
昨日もたしか布団に倒れて
スマホで動画を観ようとしてそのまま
臭い
獣臭
スマホと顔の間に
獣
紛う事なき獣
脇の下に入り込み
二の腕を掴み
頬を舐める
鼻先を甘噛みし
眉間に額を押し当てる
残念な事に彼女のコミュニケーションは全て痛い
甘えた薄目をしながら
二の腕から腋窩へと手を移す
じっとりと爪が入り込む
大切な血管が走っている場所だ
おーいいいのかー
ご主人様死ぬぞー
エンジンのようにいつまでも喉を鳴らす
眉間と喉元を撫でてやる
目を閉じ仰け反りながら更に喉を鳴らす
暑いし臭い
離れようとすると更に爪を強く立てる
目覚めのシャワーを浴びたい
無理矢理離れようとしたら
掠れた声で長く啼いた
この部屋で生き物はふたつ
僕が出ていけば残るはひとつ
わからなくない
いや
とてもよくわかるよ
青は黒であり白で
空はその往復だ
あの空が白んでくるまでのあと少しだけ
わかった
もう少しだけここで