白いレースのカーテンが柔らかく
日に焼けたレールからかかっていて
ピンッとはならず縦長にロールされ
空気を含みつつ窓からの隙間風に揺られている。
砂丘のようになだらかに続く湾曲が
罫線の柄と相まって
方眼紙上の立体図のように
心地よい錯視を起こさせる。
筒状になったゆとりの部分に
大きな虫がすっぽりハマっていて
どう考えても葉っぱとかじゃなく
小動物以上を捕食するやつだ。
頭部を下にし棘のある脚で
繊維に引っかかるようなカタチで
今にも動きそうな装いで
だが微動だにせずその場所を出ない。
黒い外殻の半透明で
ヒイラギみたいな赤い目をして
カーテンと一緒に風に揺られている。
真下で猫が白い腹を出して寝ている。
もう3時間はそこにいる。
というかきっと起きた時にはそこにいて
恐怖心の湧くギリギリのラインというか
強制的に無になる事で平静を保っている。
トイレのスイッチを切り忘れていて
さっきから換気扇の音がゴォォォと鳴る。
あれ
気付いたんだけどもしかしてこいつ
1匹じゃなくて3匹いるな。
幻覚剤などやっていない。
頭はバッチリ冴えている。
ご飯を食べてシャワーを浴びて
TVを消してもまだそこにいる。
よーしわかった。
お前ら信じるぞ。
ずーっと動かないんならいいぞ。
外に出したいが触るのとかは無理。
真下で猫は半目で寝ている。
また月曜日が始まって
恋人とかとも過ごしたりして
夏になって ネコもいて
虫は5匹に増えていた。
あぁそういえば
ずっと忘れていたトイレのスイッチ
今更消すと
ゴォォォと唸っていた換気扇の音と一緒に
蟲達もすっと消えていった。