『地獄で笑え』解説⑦

『透明な絶望』解説

『地獄で笑え』というタイトルのアルバムゆえ、わかりやすい地獄の曲が必要だなと思っていました。

 

先のブログでも書きましたが、地獄というのは暗闇の中ではなくて、明確に見えている状態の事だと思っています。

 

そして、“脱け出せない”。

 

いや、“脱け出そうとすらしない”状態こそ地獄。

 

『透明な絶望』は一番時間がかかった曲です。

リアルに1年半から2年くらいかかってしまってる。

何小節書いたかわからないけど、実際の5倍の量は確実に最低でも書いてます。

 

beatが最高過ぎて汚せなかったという難しさもあったし、やはり内容。

自分の主張を批判はされても意図を誤解されるような事だけは避けたかった。

 

とにかく、知れば知るほど憂鬱になる日々。

 

絶望とは黒ではない。残酷なほどに包み隠さず、透明だ。

 

 

Lyric

【verse】

粘ついたバッドニュース。

ぬるくなったアップルジュース

飲み込んでも飲み込めない現実と葛藤中。

昨日の晩深く掘り過ぎたネットサーフィンが

朝になっても引きずっていて結構辛いんだ。

 

嗚呼、耐えきれず外に出りゃあ

知らん顏で耳塞いで動く生活がベルトコンベアーみたいで

フード被り1人唾を飲み込んでた。

俺はお前らと違うって固く胸に誓って。

 

あぁなんて人間は弱いんだ。

きっとお互いが怖いんだ。

最大の抑止力は敬意なのに

よく視力も使いもせずに軽視する。

武力に侮辱が混じる現実。

 

今日も人知れず、人を紙幣と等しいって

思う連中が愛おしい人を死へ追い込む。

NO WARとは心で思いながらももう

いつの間にか教育操作。

歌えなくなってた『war is over』。

 

なぁ、俺だってpoliticalな話題よりも堀北〇希の話がしたいし、よそ見したい気持ちもわかるよ。

 

哀悼もアイコンタクト。

周りを見てアイコンとタグを

使いすぐ一晩で満足。

向こうじゃ毎日missile goes down.

 

未だ晴れる気がしないパレスチナの空を思うも戦地よりも目の前の数センチだ。

読み途中のマイケル・サンデル

は本棚にしまって泣いて荒んでく

事も既に今は飽きて歌ってる。

 

Dirty deeds done dirt cheap.

他人のような振りをして

ホッとしてたんだ。

 

所詮どんなに罪悪感だって未完成の道徳

も変えられない負の慣性の法則。

嫌になる未来よりも今食べるdinnerの味が大事と

全身全霊で守る精神衛生。

 

無知なフリして道外して一緒に死ねばいいのかな。

今が良くて痛くなけりゃ目を瞑っていいのかなぁ。

 

 

【hook】

線 を引くよ必死に。変われない者がまた変わろうとする者を変わり者と嘲笑い

そう、認めたくないのさ。疲れてるお前は世界を変える代わりにチャンネルを替えた。

hand 挙げれば避雷針。“どうせ出来ないし”と出る杭達を敵対視して

大 切な事を見失ってく。

 またno change no change no change

 

透明な絶望。

 

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人は何よりも精神衛生を保つ事に必死になる。

 

罪悪感から逃げられない者は、積極的にこのテーマに向き合う事で保つ。

この罪悪感に耐えられない者は、積極的に逃げる事で保つ。

 

内容、メッセージはこの歌詞の通りなので、改めて言わないけれど、ちょっとした経緯や豆情報だけ。

 

マイケル・サンデルは『Justice』という本の筆者。

この本にもある通り、正義は一つではなくいくつかのパターンがあって、

実際にこの本は読みかけなんだけど、

偉そうなこと曲にしてる自分ですら“読みかけ”だろ?っていう皮肉。

 

この制作の上で、強くエネルギーになったものが『共謀罪』のニュース。

 

ある思考や言動が、犯罪、またはデモや集会として取り締まりを受ける可能性がある。

 

いつかまた国が一丸となって戦争をしようという空気になってしまった時に、

“平和”であったり“戦争反対”という言葉は“共謀罪”で取り締まりを受けてしまう未来もあり得る。

 

いやいやいや、国民がそういう状態なら、みんな一丸にならないと勝てるものも勝てないんだからそりゃ当然だろ。

 

と思う人も既にいるだろうけど、

ほとんどの人は“そんなことまでにはならないでしょ。”と考える。

 

今は思わなくても、世論や社会の流れで、戦争を肯定せずとも否定はできないというような、

そういう側になる人間は絶対に増える。

 

僕は今回のアルバムで絶対にポリティカル(政治的)な要素を入れたかった。

それはある一方の主張というよりは、“目を逸らすなよな”という意味で。

 

僕の大好きな曲でmeisoさんの『買ってはいけない』というのがあるけど、

“毎日の買い物が本当の投票って訳”

とあるけどその通りで、

自分たちの毎日の言動は社会に“これが我々の生き方としての考えだ。”として社会や政治に反映される。

つまり毎日の“bought”が“vote”になるということ。(本当にmeisoさん天才過ぎだろ...)

 

だったら僕たちのようなアーティスト、たとえ趣味の延長のようなカタチでの活動だとしても、

いや、だからこそ、主張しなくてはいけない。

 

あるものは絵に抽象的に隠して、あるものは、様々な隠語や暗喩を使って、それでも叫ばなくてはならない。

 

声が出せない大多数の人の“微かな抵抗”は出来る限り沢山存在すべきだと思う。

 

 

だから僕も最後のHookに隠しました。

 

それまでのverseではほぼ触れまくってはいたけど、明言はしていなかったシンプルな主張。

 

 

4ヶ所の頭の、強いイントネーションを繋げてもらって、

 

それが結局はなんと言われても僕の主張。

 

ちなみにこの曲の元のタイトルは『modern hell』。

でも、やっぱり“透明”というwordを入れたかった。

 

最後に実際には割愛したんだけど入れる予定だった冒頭の文を載せておしまい。

 

 

とめどなく溢れる

透明度の高い絶望を誰も

止めようとも思わない。

それこそが 地獄。